社論簡の壁

これは壁 Advent Calendar 2025の記事です。

社論簡(社会実装をしなさい、論文は簡単)の壁

社論簡が今年の流行りのようなので、(主にAIの)社会実装の壁について書きたい。

社会実装とは

そもそも社会実装とはなにか。みんなそれぞれの社会実装の定義をしていて話が噛み合っていないこともしばしばあるので、私なりの社会実装の定義を考えてみたい。

(AIの)社会実装とは、その言葉をそのまま見ると、「AIを社会に実装する」ことなので、何かしらのAIを社会に実装すればOKのように見える。だが、実装しても継続的に使われなかったら無なので、継続的に使われるようになった時に、社会実装が達成されたということにしよう。ただし、継続的に使われるものとなったとしても、わざわざリソースをかけて続けるものではないと判断されてサスペンドされるという壁もあるので、壁は永遠に続く。

社会実装を達成するために必要なこと

継続的に使われるためには、その技術がないときと比べてあるときの方が「良い」ことが必要であるが、まずここが難しい。まず、なにをもって「良い」とするのか。

定量的に効果を示せたらよいかもしれないが、そもそも簡単に効果を定量的に示せるような応用はさっさとやられてしまっているので、基本的にはしんどいものしか残ってない。 例えば創薬を効率化しますといって、同じプロジェクトをAIあり・なしでやることはできない(お金かかるし)ので,わかりやすく効果を示すことはできない。 じゃあAI導入して比較も必要ないほど圧倒的な効果を示せるかというとそんなことはない。そもそも、既存のワークフローは、それはそれで最適化されてるので、ぽっと出のAI専門家が入ってきてすぐわかる改善ができるかと、そんなことはない。 じゃあ、なんか凝った解析して、定量化するかとなるかというと、ならない。凝った解析はややこしいので、意思決定者を説得できるか怪しい。

では、どうするのかというと、基本的には関係者に満足してもらうしかないと思う。社会実装してよかったねと、ステイクホルダーの多くに思ってもらうことが必要だと思う。

ステイクホルダー満足の壁

ステイクホルダーはいろいろな種類の人がいる。会社でいうと、株主、経営陣、マネージャー、現場の人などなど。いろいろな性格の人もいる。全員満足させる壁がある。

現場の人の壁

現場の人の壁は分厚く高い。社会実装に付き合わされる現場の人の身にもなって欲しい。わけのわからん偉そうなAI研究者とやらがきて、あなたの業務を効率化してあげますときたあげく、現場のこともよく知らないまま謎の提案をし、いや、そんなものいらないなぁと思いながらも、仕事だからと適当に付き合いつつお茶を濁す。PoC失敗パターンである。

経営陣の壁

経営陣の壁も分厚く高い。経営陣の身にもなって欲しい。高いお金払って、すぐに定量的に費用対効果も出せないとは何事か?!と思うだろうし、でもAIやってると言わないといけないという謎のプレッシャーも感じているかもしれない。

ステイクホルダーの壁を乗り越えるには

ステイクホルダーの壁は総合格闘技である。みんなが満足すればなんでもありである。

技術だけ突き詰めれば壁を乗り越えられるかというと、なかなか厳しいと思う。課題を的確に設定し、全員が黙るような圧倒的な改善ができれば乗り越えられるだろうが、そんなことができるかもわからないので、技術一辺倒でいくのはリスクが高い。

ではどうするかというと、楽しく、元気に、朗らかに仕事をするのが良いと思う。 そもそも課題を設定するには現場の知識も必要だし、競合他社がなにをしているのかを踏まえて、独自性を出す必要もある。 それを一気にやることは無理なので、いろいろなステイクホルダーが不満を抱えた状態を長く過ごし、その中で適切な課題を捉えたり、独自性を出していく必要がある。 そんな中でも社会実装を続け、信頼を勝ち取り、味方を増やしていくには、楽しく、元気に、朗らかに、である。 楽しく、元気に、朗らかに仕事をしていると、誰かしら助けてくれたり、協力してくれる人が出てきて、そうするとなにかしら成果を出すキッカケを掴むことができるだろう。社論簡の壁は、楽元朗で乗り越えろ!!!!